AGA(男性型脱毛症)は、男性ホルモンの影響によって頭頂部や前頭部の毛が抜けてきたり薄くなっていく、進行性の薄毛の疾患です。
現在ではクリニックで様々な治療が受けられますが、AGA治療においては日本皮膚科学会が作成・訂正しているガイドラインに則って治療を行っています。
治療の中には推奨していない治療方法もあるため、治療を受ける前にはガイドラインでの推奨度を確認しておくと安心です。
本記事では、AGA治療のガイドラインについて、各治療方法の特徴や推奨度をご紹介します。
AGA治療のガイドラインとは?
AGA治療を行う際、医師は治療のガイドラインを参考にしています。
AGA治療は、「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」と呼ばれるガイドラインが存在します。
ガイドラインは治療方法や治療の効果、推奨度が5段階で記載されています。
- 行うよう強く勧める
- 行うよう勧める
- 行ってもよい
- 行わないほうがよい
- 行うべきではない
ガイドラインは大学医学部の教授や専門クリニックの院長など、皮膚科の分野におけるスペシャリストが作成し、医療従事者ではない一般人でも閲覧できます。
内服薬の推奨度
内服薬は、経口摂取により直接体内から脱毛症の改善を試みる治療方法です。
AGAガイドラインの内服薬の推奨度を見ていきましょう。
フィナステリド:行うよう強く勧める
フィナステリドはAGAの投薬治療の代表的な成分で、先発薬の名称がプロペシア、ジェネリックの名称はフィナステリド錠として販売されています。
5αリダクターゼⅡ型という酵素の働きを阻害し、AGAの原因となるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成を抑制します。国内外の複数の臨床試験で有用性と安全性が確認されています。
デュタステリド:行うよう強く勧める
デュタステリドはAGA治療薬ザガーロの有効成分で、ジェネリックの名称はデュタステリド錠として販売されています。
フィナステリドは5αリダクターゼⅡ型のみ阻害しますが、デュタステリドは5αリダクターゼⅠ型も阻害します。
海外の臨床試験においては、フィナステリドよりもデュタステリドの方が毛髪数と毛直径の増加の効果が見られたと報告されています。
ミノキシジル:行うべきではない
ミノキシジルは元々は降圧剤として開発されました。投薬した患者に体毛が濃くなるという副作用が見られ、再開発された薬剤です。
AGA治療として開発された薬剤ではないため、呼吸困難・胸痛・心拍数増加、むくみ・うっ血性心不全などの重大な心血管系障害が起こるリスクがあります。
そのため、国内では認証されておらず医療ガイドでは推奨していません。
クリニックで処方しているミノキシジルの内服薬は、医師が個人輸入したものになります。
外用薬の推奨度
外用薬は、抜け毛や薄毛の気になる頭皮に直接薬剤を塗布する治療方法です。
AGAガイドの外用薬の推奨度を見ていきましょう。
ミノキシジル:行うよう強く勧める
市販されている育毛剤にもミノキシジルは配合されています。
育毛効果が認められているため、薬機法によって育毛剤ではなく「発毛剤」と謳っていいと許可されています。
ただし、ミノキシジルは内服薬もありますが、AGA治療として推奨されているのは外用薬のみなので、ご注意ください。
アデノシン:行うよう勧める
アデノシンも市販の育毛剤に配合されている成分です。
血行促進作用と毛母細胞の活性作用があり、臨床試験によると、ローションタイプに治療効果があらわれているようです。
カルプロニウム塩化物:行ってもよい
円形脱毛症、乾性脂漏や尋常性白斑などの治療に用いられる薬剤で、血流促進効果があります。
様々な脱毛症に対して有用ですが、AGA治療の有用性を証明するにはエビデンスが不十分です。
しかし、保険が適用されて脱毛症には有用である事実から、AGA治療に使用してもいいと評価されています。
t-フラバノン:行ってもよい
t-フラバノンとは、花王が独自に開発した育毛成分です。
髪の成長を妨げるTGF-βというタンパク質を抑制し、毛母細胞の増殖促進効果があるため、育毛を促します。
育毛剤の臨床試験において、抜け毛の減少や毛直径の増大が確認されています。
サイトプリン・ペンタデカン:行ってもよい
サイトプリンとペンタデカンは、ライオンが独自に開発した成分で、ライオンが販売している育毛剤に含まれています。
サイトプリンは、髪の成長に必要な骨形成促進因子と血管新生誘導遺伝子を増加させる働きがあります。
ペンタデカンは、髪の主成分であるケラチンという、タンパク質合成のためのエネルギーを増やす働きがあります。
ケトコナゾール:行ってもよい
ケトコナゾールは水虫や白癬、脂漏性皮膚炎などの治療薬として有名です。
育毛効果が得られるシャンプーに配合されているため、頭皮環境を整える目的で用いられています。
シャンプーだけでは根本的な改善は難しいため、外用薬や内服薬と合わせて使用するといいでしょう。
ビマトプロスト・ラタノプロスト:行わないほうがよい
ビマトプロストとラタノプロストは、元来緑内障や高眼圧症治療に用いられています。
目薬を使用した患者にまつ毛の発毛効果があったことから、薄毛効果についても臨床試験が行われています。
しかし、有用性は充分に検証されておらず、安全性も確認ができていないため、推奨されていません。
その他の治療の推奨度
AGAガイドラインに記載されているその他の治療方法の推奨度と治療方法を見ていきましょう。
自毛植毛:行うよう勧める
自毛植毛はAGAの影響を受けていない後頭部の毛根と皮膚を移植する外科手術です。
高い生着率が実証されていることから、行うよう推奨されています。
地毛を使用するので自然な仕上がりになりますが、治療費は高額になります。
人工毛植毛:行うべきではない
人工毛植毛は、人工毛を植毛します。
1年~1年半で自然と抜け落ちてしまうため、メンテンナンスが必要です。
ただ、これまで多くの有害な事象が報告されており、米国の食品医薬品局が事実上の禁止をしています。
定着率が低く、炎症や細菌感染のリスクもあるため、推奨していません。
LED・低出力レーザー照射:行うよう勧める
LEDやレーザーを照射した熱により、頭皮の血行をよくして毛母細胞を活性させる治療です。
発毛効果と副作用が少ないことから推奨されています。ただ、国内ではまだ適切とされる機材は認可されていません。
注入治療:行わないほうがよい
注入治療は、育毛効果のある有用成分配合の薬剤や、成長因子を頭皮に直接注入する治療です。
注射器や特殊な器具を使用するため、医療機関でしか受けられない治療ですが、有用性や安全性は充分検証されていません。
かつら:行ってもよい
治療ではありませんが、日本皮膚科学会ではかつらの着用も推奨しています。
薄毛を隠すことで人目を気にすることがなくなるため、精神的なメリットが得られます。
現在はかつらの技術も進み、従来の被るタイプだけでなく、気になる部分にシートを貼る貼り付け式タイプもあります。
根本的な改善にはなりませんが、即効性があり生活の質が向上したという点から推奨されています。
まとめ
AGA治療のガイドラインと、各治療方法の推奨度をご紹介しました。
治療方法はAGAの進行度によって変わり、複数の治療方法を組み合わせて行う場合もあります。
ガイドラインの内容は参考程度に確認し、治療を行いたい方はクリニックで受診して、自分に合うAGA治療を受けましょう。