尋常性疣贅(ウイルス性)

尋常性疣贅(ウイルス性)

ウイルス性のいぼをひとまとまりに「尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい」と説明するケースがありますが、これは広義の表現で狭義の意味は異なります。広い意味で指す尋常性疣贅と狭い意味で用いられる尋常性疣贅はどう違うのか、いぼ全体の分類や治療法を解説します。

広義の尋常性疣贅とは?

広義で表される「尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)」は、ヒトパピローマウイルス(HPV)が皮膚内に侵入することで発症するいぼの症状全般をさします。厳密には、HPV2a/27/57型が主に人から人への感染で皮膚に接触し、目には見えないほどの引っかき傷やかすり傷または粘膜から侵入。肌のもっとも最下部の基底層で増殖することで肌に盛り上がりやザラツキができる…これがメカニズムです。

ただ、もととなるHPVウイルスは同じであっても、身体のどのような部位にいぼが発症するかで厳密にはいぼの名称は細分化されています。以下の別の記事で詳しく解説していますが、その種類には「指/糸状疣贅」「足底疣贅」「爪周囲疣贅」などがあります。

指/糸状疣贅
足底疣贅
爪周囲疣贅

また、感染元のウイルスがHPV2a/27/57型ではないもの(ここでは「特殊型」とする)には、「扁平疣贅」「尖形コンジローマ」などがあります。

扁平疣贅
尖形コンジローマ

このように、ウイルス性のいぼを一概に「尋常性疣贅」と説明・表記するのか、身体のどこにできるかといった部位別に細かく名称を変えるのかは、説明する人(医師)や媒体(書籍やネット記事)によっても異なってきます。

狭義の尋常性疣贅とは

では、狭義の意味では尋常性疣贅とは、身体のどの部分にできるいぼを指すのでしょうか。これは「四肢や手背・足背」にできるウイルス性のいぼを指す場合が多いです。四肢は人の両手と両足、手背は手の甲、足背は足の甲の部分のことをいいます。つまり、「四肢や手背・足背」以外のHPVウイルス性のいぼは、厳密には別の名称で表される場合もあると理解しておいてください。

とはいえ、初見ではいぼの分類を理解するのが難しいかと思いますので、以下に日本皮膚科学会ガイドラインがWeb上に掲載している「尋常性疣贅診療ガイドライン 2019(第1版)」より、いぼ(疣贅)の分類をまとめています。

    臨床病型 臨床的特徴 原因ウイルス
ウイルス性疣贅 尋常疣贅性 典型例(厳密な定義での尋常性疣贅 表面粗造な類円形の結節を呈する HPV2a/27/57
指/糸状疣贅 顔面,頸部で外方向性に増殖する、すぼめた指や糸状にみえる HPV2a/27/57
足底疣贅 足底で外方向性増殖が乏しく、表面粗造な角化性局面を生じる HPV2a/27/57
モザイク疣贅 足底疣贅の中で個疹が融合し敷石状 になった状態 HPV2a/27/57
爪囲疣贅 爪周囲に生じる難治性疣贅 HPV2a/27/57
爪甲下疣贅 爪甲下から塊状に隆起する HPV2a/27/57
ドーナツ疣贅(リング疣贅) 環状を呈する疣贅、再発例としてみられる HPV2a/27/57

上記の表でまとめている病名以外にも、先ほど「特殊型」と分類した「HPV2a/27/57」型以外のウイルス性いぼもあります。例えば、思春期の頃に顔や手背にできやすい「扁平疣贅」、外陰部(性器)にできる「尖形コンジローマ」など。

また、HPVウイルスが原因ではなく、肌の老化が原因で褐色(茶色から黒)のシミのようなイボを指す「老人性疣贅(脂漏性角化症)」、首まわりに小さなブツブツができる「軟性線維腫(スキンダッグ)」も広くは「いぼ」と総称してくくられるケースがあります。当院では炭酸ガス(CO2)レーザーを用いて脂漏性角化症、首イボを治療しています。

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まとめ

・尋常性疣贅といういぼの病名は「広義」を指す場合と「狭義」を指す場合がある
・広義の尋常性疣贅はHPVウイルスの感染が原因となるいぼを指す
・狭義の尋常性疣贅は「四肢や手背・足背」にできるHPVウイルスが原因のいぼを指す