ほくろ(母斑)の種類について

ほくろ(母斑)の種類について

ほくろは、原因となる細胞の「母斑細胞」が皮膚のどの深さで発生したかによって、種類や名称が変わります。

ほくろの種類によっては、悪性であるかを疑う必要もあるため、見慣れないほくろができた場合は注意が必要です。ここではほくろの種類や、それぞれのほくろの特徴について解説いたします。

医学的に「ほくろ」とは?

ほくろとは、医学的には「単純黒子(たんじゅんこくし)」、または「色素性母斑(しきそせいぼはん)」と呼ばれます。生まれた時からある先天性のもの、年齢を重ねるにつれて発生する後天性のものがあります。

顔や身体のあちこちにでき、小さいものから大きなもの、平らなものから盛り上がったものまで、形状はさまざまです。皮膚細胞には紫外線や刺激にさらされると、メラニン色素という黒い色素を放つ「色素細胞(メラノサイト)」が存在しています。

ほくろの発生原因は、このメラノサイトそのものが皮膚の一部分に集中してできるためです。よく、ほくろとシミを混同して考えてしまいがちですが、シミはメラノサイトが放出したメラニン色素が肌に残って、色素沈着を起こした状態であり、ほくろはメラノサイトが変化して母斑細胞が一部分に固まってできたものです。

さらに、ほくろは母斑細胞が皮膚層のどこに集中しているかによって、種類が分類されています。

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ほくろの分類

皮膚は大きく分けて、「表皮」「真皮」「皮下組織」の3つから成り立っています。ほくろの原因である母斑細胞の元、「メラノサイト」は表皮の最下部である基底層に存在していますが、変化して母斑細胞になると、その位置が変わることがあります。

そして母斑細胞が集中してできることでほくろになり、母斑細胞が集中した位置によって「境界母斑」「複合母斑」「真皮内母斑」に種類が分けられます。

境界母斑

母斑細胞が表皮と真皮の接合部分にできたほくろを「境界母斑」と呼びます。複合母斑の初期段階であり、一時的な状態である場合が多く見受けられます。

角化細胞によく似た「弱好酸性の細胞質を持ったダイス状の大きな細胞」で構成されてます。ほくろ自体の見た目は小さく薄く、目立たない場合がほとんどです。

複合母斑

境界母斑と真皮内母斑の混合型と呼ばれるほくろが「複合母斑」です。表皮と真皮の接合部分、さらにより深い部分である真皮内にも、母斑細胞が存在している状態です。

小型の母斑性母斑である場合が多いとされています。子供のほくろの多くが複合母斑であり、見た目は境界母斑よりもやや黒く濃いのが特徴です。

真皮内母斑

真皮内にのみ、母斑組織ができたほくろを「真皮内母斑」と呼びます。成人のほくろは真皮内母斑である場合がほとんどです。ほくろの形状は黒く半球状に盛り上がっており、境界母斑、複合母斑が時間経過で真皮内母斑となる場合もあります。

Ackermanが提唱した分類

ほくろには、先天性のものと後天性のものがあります。後天性のほくろは、アメリカの皮膚医学で病理学者でもあるA. Bernard Ackerman氏が提唱した4分類にわけられます。

Miescher母斑

顔や頭など首から上に発生し、7mm前後の半球型にふくらんだ後天性のほくろを「Miescher(ミーシャー)母斑」と分類します。毛が生えている場合も多く見られます。

若年時に発生した場合ほとんどが青黒色調ですが、年齢がたつにつれて淡褐色、常色へと変化するのが一般的です。これは、最初は浅い部分にあった母斑細胞が時間経過を伴い真皮内の深い部分へと沈み、母斑細胞が脂肪化して、色素が抜け柔らかく膨れ上がるためではないか、とされています。

Unna母斑

上腕や足、首にできることもあり、柔らかくふくらんだ後天性のほくろを「Unna(ウンナ)母斑」と呼びます。表面は凸凹しており、半球型か楕円型、さらに大きさも10mm前後と大きなほくろです。

母斑細胞は表皮と真皮の境界線上か真皮内と、やや深い位置にあります。しかしMiescher母斑に比べれば浅い部分に位置するため、レーザー治療はより容易です。

Clark母斑

手のひらや足のうらを含めた、全身に現れる薄く平らなほくろを「Clark母斑」と分類します。直径は5mm~12mm程度とさまざまです。色素は黒褐色、形は楕円形を有しています。

母斑細胞の深さは曖昧で、輪郭や境界線も不明瞭。Clark母斑が早期病変したものが、単純黒子ではないかともいわれています。幼少期に出て、成長とともに消えていくのがほとんどです。

Spitz母斑

子供に発生する場合が多く、ほとんどが幼児期にできるものです。全身のどこにもで発生し、急速に大きくなる傾向、さらに赤色を含む場合もあるのが「Spitz(スピッツ)母斑」です。

その他の母斑にくらべて拡大スピードの大きさから慌ててしまいがちですが、基本的には良性の母斑疾患であり、転移や一定以上の拡大はみられません。

ただし、悪性黒色腫(メラノーマ)との鑑別が難しいため、発生したら受診が懸命です。母斑細胞の位置は、境界・複合・真皮のどの母斑にもあてはまります。

まとめ

ひとくちにほくろといっても、形状や種類はさまざまです。悪性のものと見分けがつきにくい場合もあるため、気になるほくろが出たら、受診をおすすめします。お気軽に私たち、当院までご相談ください。

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・ほくろはメラノサイトが変化し母斑細胞となったものの集合体
・ほくろは母斑細胞ができた位置によって「境界母斑」「複合母斑」「真皮内母斑」の3種類に分類できる
・さらに後天性のほくろは、A. Bernard Ackermanの提唱により、4種類に分類できる。
・A. Bernard Ackermanによる後天性のほくろの分類は「Miescher母斑」「Unna母斑」「Clark母斑」「Spitz母斑」